薬剤師国家試験の合格率と大学別ランキング・年度別の推移
薬剤師国家試験の合格発表が行われ、自分の将来について真剣に考え始めた高校生の方や、お子様の進路をサポートしたい保護者の方も多いのではないでしょうか。
「薬剤師を目指したいけれど、大学によって合格率にどれくらい差があるのか知りたい」 「私立大学と国公立大学、どちらを選べば確実に資格が取れるのか」
「最近よく耳にする『ストレート合格率』という言葉の意味を詳しく把握したい」
薬学部での6年間は、決して楽な学びではありません。特に、薬学部生の最大の目標である国家試験の合格率を正確に把握することは、自分にぴったりの大学を選び、将来の安定したキャリアを築くスタートラインとなります。
そこでこの記事では、2026年(令和8年)2月に実施された第111回薬剤師国家試験の結果にも触れながら、薬剤師国家試験の全体的な合格率から、大学別ランキング、年度別の推移、そして新卒と浪人生の違いまで、まとめて紹介します。
薬剤師国家試験の全体的な合格率と年度別の推移

薬剤師国家試験の合格率は、例年どのような傾向にあるのでしょうか。まずは、大きな流れを掴むために、これまでの推移と受験者数の変化について見ていきましょう。
第100回から現在までの合格率と受験者数の推移
薬剤師国家試験は、例年13,000人から15,000人程度が受験する大きな国家試験です。第100回(2015年)以降のデータを振り返ると、全体の合格率はおおむね 60% 台後半から 70% 台前半で推移しています。
例えば、ここ数年の合格率を年度別に見てみましょう。第109回(2024年)の合格率は68.43%、第110回(2025年)は68.85%と、安定した合格率が続いています。2026年に実施された第111回試験においても、この大きな傾向に変化はないと考えられ、受験生の10人に6〜7人の割合で薬剤師が誕生する見込みです。
薬学部の新設ラッシュが落ち着いたこともあり、受験者数も以前のような目に見えた増加傾向は見られなくなりました。しかし、薬剤師としての資質を厳格に問う厚生労働省の方向性は年々強まっており、合格するためには早い段階からの計画的な準備がこれまで以上に重要となっています。
過去の合格基準の変化と難易度
合格基準については、第101回(2016年)試験から大きな変更がありました。それまで、全問題の65%以上の得点で合格だった絶対評価から、試験問題の難易度や平均点を考慮して算出される相対基準へと移行したのです。
相対基準は、受験生にとって非常に大きな意味を持ちます。以前の絶対評価では、問題が極端に難化した際、合格者が激減するリスクがありました。しかし現在は、平均点や標準偏差を用いて合格ラインが調整されるため、試験の難易度によって合格点が210点から235点 前後まで変動します。
そのため、合格基準の変更によって、平均点が低い難しい年であっても、他の受験生と比較して一定以上の実力があれば合格できる可能性が高くなりました。一方で、必須問題の各科目において最低ラインを下回らないこと(いわゆる足切り)が設定されるなど、全科目バランスよく学習する姿勢が求められる試験となっています。
実際に過去のデータを見ると、第110回試験では合格点が213点となり、難易度が高かった第106回と同水準の結果となりました。このように、周囲の受験生と比較して上位何パーセントに位置しているかが重要となるため、基礎的な問題をひとつも落とさない確実な得点力が求められるようになっています。さらに、禁忌肢問題の選択数が2問以下であることや、必須問題の各科目で 30%以上 の得点が必要となる「足切り」ルールも引き続き設定されており、さまざまな視点を意識した学習が不可欠です。
難易度の面では、ここ最近の試験を見ると、暗記問題が減り、実際の臨床現場を想定した思考力や判断力を問う、実践問題の割合が高まっています。背景として、薬の専門家として、薬剤師がより主体的に医療に携わることが期待されていると考えられます。
参照:薬剤師国家試験|厚生労働省
参照:過去10年間の薬剤師国家試験(受験者数・合格者数・合格率)の推移 _ 【個別指導】CES薬剤師国家試験予備校
参照:【厚労省】薬剤師国試、合格判断で相対基準導入‐足切り緩和も _ 薬事日報ウェブサイト 薬学生版
参照:薬剤師国家試験の合格基準は? 足切り基準や配点、日程も解説!_なの花薬局
大学別の合格率ランキングから見る傾向

次に、受験生にとって気になる、大学別の合格率について見ていきましょう。
国公立大学と私立大学で異なる合格率
大学別のデータを分析すると、国公立や私学といった設置主体によって合格率の特徴に明確な差があることがわかります。
国立大学および公立大学のうち、合格率ランキングの上位を占める大学は入学試験の難易度も高いですが、国家試験の合格率も毎年80%台から90%台という非常に高い数字をマークしています。教育環境が整っており、学生が自ら深く学ぶ姿勢が根付いていることが、薬剤師国家試験の合格率の安定感にもつながっていると考えられます。
一方、私立大学は大学によって合格率の幅が広いのが特徴です。合格率が90%を超え、国立大学に匹敵する実績を誇るトップクラスの私立大学がある一方で、30%台や40%台に留まってしまう大学も見られます。私立大学への進学を検討する際は、志望する大学がどのような国試対策サポートを行っているかを、年度別の推移も含めて慎重に見極めることが大切です。
全国の大学別合格率ランキング上位校
直近の合格発表データに基づいたランキングの上位校には、常連の顔ぶれが並びます。千葉大学、金沢大学、東北大学といった国立大学は、毎年トップクラスの合格率を誇っています。
私立大学に目を向けると、北里大学、慶應義塾大学、名城大学、星薬科大学といった伝統校や、手厚い個別指導を売りにする大学が90%前後の高い合格率を維持しています。特に近年では、山陽小野田市立山口東京理科大学のような公立化された大学や、近畿大学、昭和大学なども上位に食い込んでおり、教育体制の強化が伺えます。
こうしたトップクラスの大学に共通しているのは、6年生になってから国家試験に向けて追い込みをするのではなく、低学年次から医療人としての意識を高く持たせる教育プログラムを組んでいる点です。例えば、早期から模擬試験を導入し、成績不振者に対しては個別担任制による徹底したフォローアップを行うなど、学生をひとりにさせない体制が整っています。
高校生のみなさんが大学を選ぶ際は、ランキングや、大学のパンフレットに記載された合格率の数字だけでなく、最後まで面倒見が良いかといったポイントでも見ていきましょう。学習施設、模試の活用頻度、教員のサポート体制など、「なぜその大学が高い合格率を出せているのか」という理由を調べることが、後悔しない進路選びにとても重要です。
参照:第110回薬剤師国家試験(2025年)合格発表!ボーダーや合格率、難易度を解説|薬学生の就活・国試対策ならファルマスタッフ薬学生
参照:【2025年】薬剤師国家試験の合格率は?留年や退学者の割合についても解説 _東京医薬看護専門学校
新卒と浪人生で大きく開く合格率のリアルな数字

合格率を正しく読み解くうえで、「新卒」と「浪人生」の差も注意が必要です。
薬剤師国家試験全体の合格率自体は例年70%前後ですが、新卒者に限ると80%〜85%程度までアップします。一方で、既卒者の合格率は、40%〜50%程度まで低下しており、新卒と浪人生の差は避けては通れない現実です。実際のデータで見比べると、現役合格を目指すことがいかに大切かが、わかるのではないでしょうか。
卒業時期によって合格率に差が生まれる大きな理由は、学習環境にあります。新卒生は大学のカリキュラムに沿って、クラスメイトや仲間とともに最新の出題傾向を反映した指導を受けることができます。しかし、一度卒業して浪人生となると、自己管理の難しさや孤独感、学習リズムが乱れやすいといった精神面・環境面でのハードルがより一段と高くなるのです。
浪人生の実態をさらに深く見ると、合格率が低迷する要因には情報格差も挙げられます。国家試験は毎年のように出題傾向が微調整され、時事問題や新薬に関する知識が追加されます。大学という教育のネットワークから離れると、鮮度の高い情報を一つひとつ自力で収集しなければならず、学習効率が大きく低下してしまうのです。
そのため、浪人生が合格を目指すには、専門の予備校に通うなど、強制的に学習リズムを保てる環境を確保することが鍵となります。とはいえ、予備校の授業料は決して安くはなく、精神的・経済的な負担は相当なものです。
これから薬剤師を目指すみなさんには、ぜひ新卒合格というチャンスがいかに貴重であるかを理解していただき、入学した瞬間から常に6年後の国家試験を意識しながら、強い決意を持って学習に励んでほしいと願っています。
進路選びで注目したい「6年間ストレート合格率」
最近、薬学系大学の本当の教育力を測る指標として注目されているのが、6年間ストレート合格率です。
一般的な国家試験合格率は、その年に受験者数のうち何人が合格したかを表します。しかし、なかには合格できそうにない学生を留年させ、受験させないことで、見かけ上の合格率を高く保っている大学も存在する、という指摘があります。
これに対し、ストレート合格率とは、薬学部に入学した学生が一度も留年・退学することなく6年間で卒業し、そのまま現役で国家試験に合格した割合を算出したものです。
ストレート合格率で見直すと、全国の私立大学の平均は6割程度といわれています。つまり、入学した10人のうち4人は、6年間で薬剤師免許を手にできていない計算になります。一部の大学では、ストレート合格率が30%台まで落ち込むケースもあり、大学選びがいかに大切であるかを物語っています。
【ストレート合格率の高い大学の特徴3つ】
・学生一人ひとりの習熟度を把握し、早期から苦手分野の補習を行っている
・実務実習と国試対策の両立を支援する優れたカリキュラムがある
・学生のメンタルケアやモチベーション維持に大学として取り組んでいる
このように、ストレート合格率が高い大学は、学生一人ひとりの習熟度をリアルタイムで把握し、早期から適切な補習を行うなど、学生を脱落させない仕組みを整えています。また、実務実習と国試対策をシームレスにつなげる優れたカリキュラムや、専門のカウンセラーによるメンタルケア体制が組織的に運用されています。
保護者の方が大学の実績を比較される際は、表面的なランキングだけでなく、6年間でどれだけの学生を薬剤師として送り出せているか、ストレート合格率の推移から教育の質をぜひチェックしてみてください。
参照:過去10年間の薬剤師国家試験(受験者数・合格者数・合格率)の推移 – CES薬剤師国家試験予備校
参照:薬学部「国家試験ストレート合格率」ランキング【全国私立57薬学部】3位慶應義塾、2位星薬科、1位とワーストは? _ 教育・受験 最前線 _ ダイヤモンド・オンライン
まとめ:国家試験を突破し、地域医療に貢献できる薬剤師へ

薬剤師国家試験の合格率データを通じて見えてきたのは、確かな教育力を持つ大学選びが大切なこと、現役合格への努力が必要であること、の2点です。
薬剤師国家試験は難易度が高く、非常に厳しい壁ですが、受験勉強を乗り越えた先には、薬剤師としてのやりがいに満ちた世界が広がっています。
薬剤師の仕事は、今、大きな変革期を迎えています。かつてのように薬局のカウンターで調剤を行うだけでなく、これからは患者さんの自宅を訪問してケアを行う在宅医療の現場で、薬剤師の専門知識がこれまで以上に求められています。
地域医療を支える要として、医師や看護師、ケアマネジャーと連携しながら、患者さん一人ひとりの生活に深く関わって、健康を守るパートナーとなる薬剤師の価値は、今後さらに高まっていくことは間違いありません。
試験勉強という大変な道のりの先には、誰かの役に立てる喜びと、一生涯の誇りとなる資格が待っています。みなさんが自分にふさわしい学びの場を見つけ、晴れて薬剤師として医療の現場へ羽ばたかれることを、心より応援しています。
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