漢方薬に関わる薬剤師になるには|必要な資格・仕事内容を解説

漢方薬に関わる薬剤師になるには|必要な資格・仕事内容を解説

「漢方薬に関わる薬剤師になりたいけれど、特別な資格は必要?」「漢方薬・生薬認定薬剤師は取得したほうが良い?」と迷っている方も多いのではないでしょうか。医療用漢方製剤の調剤や服薬指導に関わるには薬剤師免許が前提ですが、専門性を高めるには知識の学び方や実務での活かし方を知ることが大切です。本記事では漢方薬に関わる薬剤師の仕事内容や必要な資格、認定制度、勉強法、年収・キャリアパスまでわかりやすく解説します。

漢方薬に関わる薬剤師になるには?まず知っておきたい基本

漢方薬に関わる薬剤師になるには、まず薬剤師免許を取得し、薬剤師名簿に登録されていることが前提です。そのうえで、漢方薬や生薬に関する知識を深め、服薬指導や患者相談に活かしていく流れになります。

漢方薬を扱うために、薬剤師免許とは別の国家資格が必ず必要になるわけではありません。
ただし、専門性を客観的に示したい場合は「漢方薬・生薬認定薬剤師」の取得が選択肢になります。

漢方薬・生薬認定薬剤師制度とは

漢方薬・生薬認定薬剤師制度は、漢方薬や生薬に関する専門的知識を修得し、能力と適性を備えた薬剤師であることを認定する制度です。研修を受講し、薬用植物園実習や試問を経て、所定の申請を行うことで認定を受けられます。漢方薬に関する知識を体系的に学び、継続的に専門性を高めたい薬剤師にとって学習の道筋になりやすい制度です。

参照:漢方薬・生薬認定薬剤師制度とは|日本薬剤師研修センター

認定を受けるメリット

漢方薬・生薬認定薬剤師の認定を受けるメリットは、漢方薬や生薬に関する知識を体系的に学べることです。独学では偏りやすい分野も、研修を通じて基礎から整理しやすくなります。

メリット内容
知識を体系的に学べる漢方薬・生薬について研修を通じて学習できる
情報提供に活かせる患者や医療従事者へ説明しやすくなる
専門性を示せる認定証の掲示やIDカードの着用ができる
キャリア形成に役立つ専門分野を持つきっかけになる

ただし、取得すれば必ず転職や収入に直結するとは限りません。キャリア形成やスキルアップの一環として考えると良いでしょう。

漢方薬・生薬認定薬剤師になる方法

漢方薬・生薬認定薬剤師になるには研修会の受講や薬用植物園実習、試問、PECSでの認定申請までを期限や更新条件を確認しながら計画的に進める必要があります。

漢方薬・生薬認定薬剤師資格の取り方

資格取得までの基本的な流れは、研修会への申し込みから始まります。研修は、座学研修またはインターネット研修として実施され、講義を受講した後に薬用植物園実習へ進む流れです。具体的には、次の順番で進みます。

  1. 日本薬剤師研修センターの公式情報を確認する
  2. 漢方薬・生薬研修会に申し込む
  3. 講義研修を受講する
  4. 薬用植物園実習を受け、レポートを提出する
  5. 試問を受験する
  6. 試問合格後、PECSで新規認定申請する
  7. 審査後、認定証が交付される

なお、試問に合格しただけで自動的に認定されるわけではありません。認定を受けるには、合格後の申請手続きまで進める必要があります。

参照:はじめて認定をとろうとするあなたへ|日本薬剤師研修センター

参照:2026年度 漢方薬・生薬研修会|日本薬剤師研修センター

受験資格・認定申請の条件

試問を受けるには研修会の出席率80%以上に加え、薬用植物園実習レポートの提出・合格が必要です。研修を受けただけでは、受験資格を満たしたことにならないため注意が必要です。

項目条件・内容
試問受験資格研修会の出席率80%以上
実習条件薬用植物園実習レポートの提出・合格
受験資格の有効期間研修会の受講修了日から2年間
認定申請できる人試問に合格し、日本国の薬剤師免許を有する人
試問合格の有効期間合格日から1年間
新規認定の期間認定日から3年間

なお、期限を過ぎると再度手続きが必要になる可能性があります。研修修了後は、試問と認定申請のスケジュールを早めに確認しておくと安心です。

参照:漢方薬・生薬認定薬剤師制度実施要領|日本薬剤師研修センター

研修会・試問・更新の流れ

研修会は、講義研修と薬用植物園実習で構成されます。年度によって、会場で受講する座学研修と、講義映像を視聴するインターネット研修が用意されます。

区分内容
講義研修漢方薬・生薬に関する知識を学ぶ
薬用植物園実習薬用植物について実地で学ぶ
試問研修・実習後に受験する確認試験
認定申請試問合格後にPECSで申請する
更新3年ごとに所定単位を取得して申請する

認定後は3年ごとの更新が必要で、認定期間中に所定の研修単位を取得し、更新申請します。更新時に必要な主な条件は、次の通りです。

  • 3年間で30単位以上を取得する
  • 認定期間中、各年5単位以上を取得する
  • 必須研修を10単位以上含める
  • 認定終了日の2ヶ月前から終了日の3ヶ月後までに更新申請する

取得して終わりではなく、漢方薬・生薬の知識を継続的に学び続ける制度として理解しておくことが大切です。

参照:漢方薬・生薬認定薬剤師制度とは|日本薬剤師研修センター

参照:漢方薬・生薬認定薬剤師制度に関するQ&A|日本薬剤師研修センター

参照:漢方薬・生薬認定薬剤師の更新申請|日本薬剤師研修センター

漢方薬に関わる薬剤師の仕事内容

漢方薬に関わる薬剤師は患者や相談者の症状や体質、併用薬、副作用リスクを確認しながら、安全で適切な服薬を支える役割を担います。

調剤薬局・病院での仕事内容

調剤薬局では医療用漢方製剤の処方監査や調剤、服薬指導、薬歴管理、併用薬の確認を行います。病院では持参薬確認や病棟での副作用モニタリング、医師・看護師との情報共有も重要です。服薬指導では、次の点を確認すると実務に活かしやすくなります。

  • 食前・食間などの服用タイミング
  • 他の漢方薬や市販薬との重複
  • 甘草、麻黄、大黄など注意が必要な生薬の有無
  • むくみ、脱力感、動悸、下痢などの体調変化
  • 症状が続く場合の受診・相談の必要性

ドラッグストア・漢方薬局での仕事内容

ドラッグストアや漢方薬局では、OTC漢方薬の相談販売が中心です。処方箋なしで購入できる薬でも、副作用や相互作用の確認は欠かせません。たとえば「葛根湯がほしい」と相談された場合でも、すぐに販売するのではなく、次のような聞き取りが必要です。

  • いつから、どのような症状があるか
  • 発熱・咳・息苦しさなど受診が必要な症状はないか
  • 持病や妊娠・授乳の有無
  • 服用中の医療用医薬品・市販薬・健康食品
  • 以前に漢方薬で副作用が出たことはないか

必要に応じて受診勧奨を行い、自己判断での長期服用を避けられるよう支援することも薬剤師の大切な役割です。

漢方薬に強い薬剤師になるための勉強法

漢方薬に強い薬剤師を目指すには処方名や構成生薬、副作用などを結びつけて学び、服薬指導に活かせる知識として整理することが大切です。

代表的な処方と生薬から学ぶ

最初は、現場で扱う機会の多い処方と構成生薬から学ぶのがおすすめです。処方名だけでなく、「どの生薬が含まれているか」を確認することで重複や副作用の確認もしやすくなります。

処方例主な構成生薬学習時のポイント
葛根湯葛根、大棗、麻黄、甘草、桂皮、芍薬、生姜麻黄・甘草の重複に注意
小青竜湯半夏、乾姜、甘草、桂皮、五味子、細辛、芍薬、麻黄動悸、不眠、発汗過多などを確認
防風通聖散甘草、麻黄、大黄、山梔子便通、長期服用、併用薬を確認

「葛根湯=風邪」のように単純に覚えるのではなく、「どの生薬が含まれ、服薬指導で何に注意するか」まで整理すると、実務で使える知識になります。

参照:クラシエ葛根湯エキス細粒|PMDA

参照:コタロー小青竜湯エキス細粒|PMDA

参照:クラシエ防風通聖散料エキス細粒|PMDA

添付文書・副作用・服薬指導を確認する

漢方薬の勉強では、添付文書を読む習慣が欠かせません。特に、効能・効果や用法・用量、重要な基本的注意、相互作用、副作用は確認しておきたい項目です。漢方において注意したい生薬・成分をまとめると、以下のとおりです。

注意したい生薬・成分確認したい副作用・症状服薬指導で伝える内容
甘草偽アルドステロン症、低カリウム血症、ミオパチーむくみ、脱力感、血圧上昇などがあれば相談
麻黄不眠、発汗過多、頻脈、動悸動悸や眠れなさが出た場合は相談
大黄下痢、腹痛便通の変化を確認
山梔子長期投与時の腸間膜静脈硬化症に注意腹痛、下痢、便秘、腹部膨満などが繰り返す場合は相談

服薬指導では「いつ飲むか」だけでなく、「どのような症状が出たら医師・薬剤師に相談すべきか」まで伝えましょう。漢方薬に強い薬剤師を目指すなら、添付文書をもとに副作用と指導内容を結びつけて学ぶと患者対応の精度を高めやすくなります。

参照:クラシエ葛根湯エキス細粒|PMDA

参照:コタロー小青竜湯エキス細粒|PMDA

参照:クラシエ防風通聖散料エキス細粒|PMDA

漢方薬に関わる薬剤師の年収とキャリアパス

漢方薬に関わる薬剤師の年収は、資格の有無だけで決まるものではありません。勤務先や経験年数、担当業務、管理薬剤師などの役割によって変わります。

年収は職場・経験・役割によって変わる

厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」によれば、薬剤師の全国平均年収は566.8万円です。また、ハローワーク求人統計データによる求人賃金は月額35.6万円とされています。

ただし、これは薬剤師全体のデータであり、漢方薬に関わる薬剤師だけの平均年収ではありません。年収に影響しやすい要素としては、以下が挙げられます。

確認項目年収への影響
勤務先調剤薬局、病院、ドラッグストア、企業などで給与水準が異なる
経験年数実務経験が増えるほど、役割や評価が広がる可能性がある
役職管理薬剤師、店舗責任者、教育担当などは評価対象になりやすい
専門性漢方薬の相談対応や服薬指導に活かせる場合がある
雇用形態正社員、パート、時短勤務などで収入は変わる

漢方薬・生薬認定薬剤師の資格や漢方薬の知識は、服薬指導や相談対応の専門性を示す材料になります。一方で、資格取得がそのまま昇給につながるとは限りません。求人票や職場の評価制度、資格手当の有無を確認しておくと安心です。

参照:薬剤師|職業情報提供サイト(job tag)

漢方薬の専門的知識を活かせるキャリアパス

漢方薬の知識は調剤薬局や病院、ドラッグストア、漢方相談薬局、製薬会社などで活かせます。今の職場で服薬指導を深めるだけでなく、漢方薬を多く扱う職場へキャリアを広げる選択肢もあります。

職場・働き方漢方薬の知識を活かせる場面
調剤薬局漢方薬の処方箋対応、服薬指導、副作用・相互作用の確認
病院医師や看護師と連携した薬物療法支援、患者への説明
ドラッグストアOTC漢方薬の相談対応、購入前の注意点の説明
漢方相談薬局体質や症状の聞き取り、継続的な相談対応
製薬会社・学術職医薬品情報の提供、資料作成、社内外への教育
MR医療従事者への医薬品情報提供、現場情報の収集

漢方薬・生薬認定薬剤師は、漢方薬・生薬に関する専門的知識や能力を備えた薬剤師であることを認定する制度です。認定後は、患者や医師などの医療従事者に対して漢方薬・生薬に関する情報提供を行う際の専門性を示しやすくなります。

漢方薬・生薬認定薬剤師を目指す前に確認したいこと

漢方薬・生薬認定薬剤師を目指す前には資格取得に必要な時間や費用に加え、学んだ知識を現在の職場でどのように活かせるかまで確認しておきましょう。

資格取得にかかる時間・費用を確認する

2026年度の漢方薬・生薬研修会は、9回の研修・全44講義と1回の薬用植物園実習で構成されています。受講料は税込60,500円で、座学研修またはインターネット研修を選択できます。なお、費用面では受講料だけでなく以下のような認定審査料や更新費用も見込んでおくことが必要です。

費用項目金額の目安注意点
2026年度研修会受講料税込60,500円テキスト代・試問料込み
新規認定審査料税込22,000円認定を希望する場合に必要
更新認定審査料税込22,000円認定後、更新時に必要
薬用植物園実習年度内は受講料に含まれる翌年度受講では別途費用がかかる場合がある
交通費・宿泊費個人差あり実習場所や居住地によって変わる

受講前に、仕事や家庭の予定と両立できるかを確認しておきましょう。

参照:2026年度 漢方薬・生薬研修会|日本薬剤師研修センター

参照:漢方薬・生薬認定薬剤師の新規申請|日本薬剤師研修センター

今の職場で漢方薬に関われる機会を確認する

資格取得を検討する際は、今の職場で漢方薬の知識を使える場面があるかを見ておきましょう。学んだ知識を実務で活かせる環境があるほど、資格取得後のキャリアにもつなげやすくなります。

確認すること確認する理由
漢方薬の処方箋枚数日常業務で漢方薬に触れる機会を把握するため
採用品目どの漢方薬を扱っているか確認するため
OTC漢方薬の取り扱い相談販売に関われる可能性を確認するため
相談対応の担当可否知識を実務で活かせるか判断するため
研修費補助費用負担を軽くできるか確認するため
シフト調整研修や実習に参加しやすいか確認するため
資格取得後の評価制度手当や役割の変化があるか確認するため

漢方薬・生薬認定薬剤師は、専門性を示すうえで役立つ資格です。ただし、職場で漢方薬へ関われる機会が少ない場合、学んだ知識を活かしにくいこともあります。現職で活かす方法を探しつつ、必要に応じて漢方薬を多く扱う薬局や相談業務のある職場も選択肢に入れると良いでしょう。

漢方薬に関わる薬剤師になるために必要な資格と今日からできること

漢方薬に関わる薬剤師になるには、まず薬剤師免許を取得し、漢方薬や生薬に関する知識を実務で深めることが基本です。漢方薬を扱うための専用の国家資格はありませんが、専門性を示したい場合は「漢方薬・生薬認定薬剤師」の取得が選択肢になります。

調剤薬局・病院などで処方監査や服薬指導、OTC漢方薬の相談対応に関わりながら、添付文書や副作用、構成生薬を学ぶことが重要です。資格取得を目指す際は研修・試問・更新にかかる時間や費用、職場で知識を活かせる機会も確認しておきましょう。

藤山 亮太

監修者

藤山 亮太

セントラル薬局グループ 取締役

製薬業界・大手チェーン薬局を経てセントラル薬局グループへ。薬局長、エリアマネージャー、部長を経て、現在は取締役として運営と地域連携を担っています。

一人の患者さまと深く向き合う医療人としての原点を大切にしながら、現場で得たエピソードや実績を介護事業者・自治体など社会へ発信し、在宅医療の価値を広げることにやりがいを感じています。

現場の運営と外部との交渉・連携が連動するダイナミズムのなかで、薬剤師という枠を超えた挑戦を続けています。

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